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合格体験記2020.05.29

『かっこいい』税理士像がモチベーションに

合格体験記 中井健治
中井健治(シニアスタッフ)
平成28年9月入社
シニアスタッフとして活躍中の中井の合格体験記です。

○税理士を目指すきっかけ
 職業としての税理士を意識し始めたのは大学生の時です。私は経済学部の出身で、会計士や税理士となった卒業生、それらを目指して勉強中の先輩方が何人もいることを知りました。最初は単純に「かっこいいな」と思っていましたが、在学中から試験勉強を始めたわけではなく、大学の講義で簿記や会計学を履修した以外は、日商簿記2級を取得した程度です。当時はまだ税理士は「目標」ではなく「憧れ」でしかなかったと言えるでしょう。
 大学卒業後は証券会社に就職しましたが、自身の性格面から営業職に限界を感じ、財務部に異動することになりました。おそらくこれが最大の転機だったのでしょう。異動後の部署には開示用の財務諸表の作成、税務申告書の作成、各支店の総務部の指導といった業務があり、まさしく会計業界並びに税理士業界に直結する内容でした。加えて、上司が税理士試験の経験者であり、「実務に必ず役立つから勉強した方がいいよ」とアドバイスしてくれたこと大きかったと思います。こうして、私の試験勉強が始まりました。

○仕事と試験勉強の両立
 税理士試験は科目合格制、一度合格した科目は一生有効ということもあり、働きながら勉強する人は多いと言われています。私は専門学校を利用していますが、基本的に授業は土日、平日は自宅学習です。自習室を利用することも多いです。あとはよく言われることですが、隙間時間を大切にするべきだと思います。特に税法は理論暗記が必須なので、毎日少しずつでも目を通すべきです。
 仕事が繫忙期になると授業に出席することも難しくなりますが、学校側もWEBフォローや振替制度を設けてくれていますので、積極的に利用してあまり周りから遅れすぎないように気を付けています。そして繰り返しますが、こういう時こその隙間時間活用です。テキストや理論集を少し眺めるくらいの時間は必ず作り出せるはずです。とにかく何かしら毎日やる、勉強することをルーティン化しましょう。

○科目ごとの勉強方法
『簿記論』
 大学在学中に日商簿記の勉強をしたこともあり、最初のうちはどこか懐かしく感じていました。簿記の予備知識がない受験生向けに専門学校では会計入門コースを設けていることが多いため、まったくの未経験者でも問題なく勉強を始められると思います。
 簿記論はすべて計算問題です。個人的には、どれだけ問題集をこなしたかが最も結果に反映される科目だと思います。それこそ、問題を見た瞬間に反射的に解き方が頭に浮かぶ、手が動き出すくらいに。どの科目にも言えることですが、問題集や答練は繰り返し解いて出題パターンを身に染み込ませましょう。まったく同じ問題は出なくても、似たような問題は毎年出題されています。多くの受験生は「あれだ!」と思うことでしょう。ここで自分も「あれだ!」と思えなければ非常に厳しくなります。

 一方で、「出来過ぎる」ことにも注意です。私が受験した年もそうでしたが、簿記論は問題量が多く、2時間ではすべて回答できないのが通常です。何も考えずに最初から解き始めたり、複雑な問題に手を出すとあっという間に時間切れになります。その反面、回答用紙に転記するだけで得点になることもあります。自信をつけるのは大切ですが、その「自分は解ける」という自信が仇となることもあります。演習を繰り返すことで、簡単に解ける問題(最優先)、解けそうだが時間がかかりそうな問題(次点)、見たこともない問題(他の受験生も同じはずなので捨てる)をつかむ感覚を養いましょう。

『財務諸表論』
 多くの受験生がそうであるように、私は簿記論と同時に勉強しました。財務諸表論の計算は簿記論の範囲と重なっている所もあるため、相乗効果が期待できます。とはいえ、この2科目を同時に勉強するにはそれなりに時間に余裕がないと難しいかもしれません。
 理論は税理士試験で初めての理論ということもあり、最初は何を書けばいいのかさっぱりでした。ミニテストや実力テストでは予告もしてくれますが、それでも応用問題・事例問題は難しいです。覚えることはもちろん大切ですが、それに加えて「どうしてそういう決まりになっているのか」を理解することが必要でしょう。会計基準や適用指針には、後半に「背景」が記載されています。以前から指摘されていた問題点への対応、諸外国の制度との比較、複数の方法から1つを選んだ理由など、理解の助けになることも多いので、機会があれば目を通してみてください。

『法人税法』
 元々実務に役立てるために始めた勉強であるため、法人税は必須でした。しかし、ここで私は「会計科目と税法科目は別物」ということを思い知りました。特に税法の理論には財務諸表論以上に面喰いました。当然のことですが、条文を覚えていることが大前提です。計算の知識でもそれなりに書くことはできますが、それは「文書」であり試験で求められる「解答」ではありません。こういう条文がある→この条文をこの問題に当てはめるとこうなる→よって結論はこうなると考えられる、という過程が必要です。私は在学中に法律系の勉強をほとんどしていなかったため、このような出題形式に慣れるまで時間がかかりました。

 法人税はとにかく勉強範囲が広いです。まずは広く浅く、各項目の基礎を固めてください。計算と理論の配点は半々ですが、計算重視で問題集を繰り返し解くのがいいと思います。計算の知識で理論をある程度カバーできることもあります。また、法人税では実際の別表形式で出題されることがあります。必要な勉強時間が最も多い科目の1つではありますが、税理士業界で働きながら勉強すると実務・試験双方に役立つ科目と言えるでしょう。

『消費税法』
 こちらも実務には必須というわけで選択しました。余談ですが、勉強して初めて国税分と地方税分があることを知りました。普段の生活において、誰にとっても最も身近な税法ではないでしょうか。そういう意味でも、消費税の知識は必要不可欠だと思います。
 消費税も法人税と同じく配点は半々ですが、やはり計算重視でいいと思います。ただ、消費税は事業主が個人の場合、簡易課税、国等の特例など出題パターンがいくつかあります。特に簡易課税は、見落としがあると原則課税と判定を誤ってしまうような過去問もありました。
 すべての取引は課税・非課税・免税・対象外のいずれかに該当するのですが、その判定は練習量をこなして精度を高めていくしかないと思います。私は間違ったものは理論集の該当ページの余白にメモしていました。そうして普段から目に入るようにして、次は間違えないよう心掛けました。

 消費税を勉強して面白いと思ったのは、消費者と事業者の双方の視点を持つようになったことです。改正や新しい制度が作られると、「一消費者としてはありがたいけど、税金計算する側からすると複雑になりそうだなぁ」と思ったりします。

『事業税』
 これも実務重視のため選択しました。最後に残った税法であり、最も苦戦している税法でもあります。事業税を勉強するメリットとしては、外形標準課税や分割基準の知識を得られることが挙げられるでしょう。あいわ税理士法人は上場企業のクライアントも多く、必然的に資本金が大きくて複数の県に事務所がある、という事例も多くなります。最近は従来の電力会社以外にも電気供給業を始める会社も多く、収入金額課税の知識も実務に役立っています。
 ところでこの事業税、試験での理論の解答量が前2科目の比ではありません。他の科目なら解答用紙5~6枚くらいだと思うのですが、事業税はその倍を軽く超えます。しかも解答すべき項目が指定されていないことも多く、想定される項目をすべて網羅するため専門学校の模範回答は理論だけでも2時間以上かかりそうなほどです。最低限解答すべき点は重点的に、それ以外は可能な限り書くという作業を計算を含めた2時間でできるよう、演習時から意識して取り組む必要があると思います。
 事業税も理論・計算ともに法人・個人の両方が出題されています。消費税は法人・個人で計算方法にそれほど差はありませんが、事業税はまったくの別物です。加えて法人の場合は外形標準課税や収入金額課税もあるため、計算パターンは税法科目でも多い方と言えると思います。ただ、計算の難易度自体はそれほど高くはありません。問題集や答練の方が難しかった年もあります。やろうと思えば最終値まで出すことも可能かもしれませんが、前述のとおり理論に時間を割く必要があるため、私の受けた3つの税法科目の中では時間配分が最も重要だと思います。

○私の勉強方法
 私は朝型で、大体5時ごろに起きて計算問題を解いています。通勤時間は理論の暗記に充てています。平日だと帰りが遅くなることもあるため、夜は余裕があれば勉強することにしています。休日は授業に出たり自習室を利用するために専門学校に行きます。直前期になると試験休みをもらえるため、1日中自習室にいることもあります。
 初めのうちは仕事と勉強の両立に苦労するかもしれませんが、半ば強引にでも勉強する時間を自分で決めて実践してみてください。授業があれば次までにやるべきことを教えてもらえるので、それを中心に勉強計画を立てるのも1つだと思います。

○あいわ税理士法人転職後
 前職では会計2科目と法人税法の計3科目に合格しました。勉強するうちにより専門性の高い世界に挑戦したいという思いも強くなり、あいわ税理士法人に転職しました。その後、消費税法も合格して残りは事業税のみという状況です。
 私がこの業界に初めて入ったこともあって、最初は戸惑ってばかりでした。一般の事業会社では基本的に自社のことだけ見ていればいいのですが、税理士業界では1人で複数の担当につくのは当たり前、業種も規模も担当先の経理体制も千差万別で、要望や必要措置も担当ごとに異なります。「これは大変な世界に来てしまった」と思っていました。
 ですが、あいわ税理士法人では2人以上のチームで行動するため、先輩がフォローしてくれます。全員が同じフロアに机を並べているため、チームや部の垣根を越えて相談することも多々あります。7月になると受験生には試験休みが与えられ、その間は先輩が業務を引き受けてくれるため、集中して最後の追い込みをすることができます。仕事も勉強もあいわ税理士法人というチーム全体でサポートしてくれる環境だと思います。

○最後に
 年に1回、たった2時間の試験のために勉強を続けることは決して楽なことではありません。時には息抜きも必要です。根を詰めすぎて体調を崩せば元も子もありません。ご家族と一緒にお住まいの方はご家族から理解を得ることも必要でしょう。
 少し勉強に行き詰まったら、勉強を始めた当時のことを思い出してください。なぜ税理士を目指そうと思ったのか、どんな税理士になりたいのか。私の場合、集約すれば学生の時の「かっこいいな」に行き着くと思います。実際、あいわ税理士法人に来て多くのかっこいい先輩方に出会いました。自分もそうなれるよう、最後の科目を取りに行きたいと思います。